インターネット上の動物虐待画像等への法的対応(後編)
弁護士の青木です。最近は朝晩の寒暖差が激しくなりましたね。
さて,期間が空いてしまいましたがインターネット上の動物虐待画像等への法的対応(後編)です。
今回は明白な暴力行為がないが不適切な飼養方法であるケースについてになります。
なお「法○○条」は,以下「動物の愛護及び管理に関する法律(「動愛法」といいます。)」の略になります。
ここで「明白な暴力行為がないが不適切な飼養方法」と言っても動物愛護法上問題になるケースとならないケースがあるので,問題になるケースについてお話します。
まず,動物愛護法44条は2項で殺傷以外の虐待について罰則を設けています。
⑴愛護動物に対し、みだりに、その身体に外傷が生ずるおそれのある暴行を加え、
又はそのおそれのある行為をさせること、
⑵愛護動物に対し、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、
その健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束し、
又は飼養密度が著しく適正を欠いた状態で愛護動物を飼養し
若しくは保管することにより衰弱させること、
⑶自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、
又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、
⑷排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて
自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管すること
⑸その他の虐待を行つた者
⑴について法44条1項(動物殺傷罪)が殺傷の結果が発生していることを要求するのに対し
上記⑴は,
「その身体に外傷が生ずるおそれのある暴行を加え、又はそのおそれのある行為をさせる」とあり
人間に対する暴行罪(刑法203条)に近い関係になっています。
実際に動物が怪我をしていなくても,みだりに(=正当な理由なく)怪我をするような危険な目に合わせることも処罰の対象になりました。
⑵について
ここでのポイントは「愛護動物に対し、みだりに…により衰弱させること」になります。
上記の「…」の部分に改正後に追加された例示が次の①~④になります。
①給餌若しくは給水をやめ、
②酷使し、
③その健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束し、
④又は飼養密度が著しく適正を欠いた状態で愛護動物を飼養し若しくは保管すること
つまり,みだりに(=正当な理由なく)上記①~④を行いかつ①~④の行為により「衰弱」させることが処罰の対象です。
⑶について
「自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと」
これは医療ネグレクトに該当します。「みだりに」や「衰弱させる」という要件が無く,飼育している愛護動物が病気にかかったり負傷した場合には「適切な保護」すなわち,必要な獣医療を受けさせる義務があると解釈できます。
⑷について
「排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管すること」
これは,多頭飼育崩壊に該当します。
上記⑴⑵と異なり「みだりに」や「衰弱させる」という要件が無く,
排泄物や愛護動物の死体が放置された施設における愛護動物飼養が処罰対象となり得ます。
また法25条,都道府県知事により指導・助言,立ち入り検査等が規定され,違反者には20万円以下の罰金刑が規定されています。なお今般の法改正で25条では「多数」という縛りがなくなり,一頭からでも指導の対象が広がることになりました。
ここで法25条は「動物の飼養、保管又は給餌若しくは給水に起因した騒音又は悪臭の発生、動物の毛の飛散、多数の昆虫の発生等によつて周辺の生活環境が損なわれている事態として環境省令で定める事態が生じていると認めるとき」なので,あくまでも「周辺の生活環境」を保護することが目的の規定です。他方法44条2項は,愛護動物への「虐待」防止を目的の一つとしています。そのため,動物愛護法25条で多頭飼育崩壊についての規定があるにもかかわらず法44条2項でも定義されているのは,25条と44条2項では以上のように条文の目的が異なるからと考えられます。
⑸について
上記⑴~⑷で具体化された虐待行為に準ずるものとして,「その他の虐待を行つた者」が規定されています。法律にすべての虐待に該当する行為を規定することはできないので,このように受け皿になる条項が規定されています。「その他の虐待」に該当するかどうかは,上記⑴~⑷の具体例のほか,法1条の目的規定から導き出します。